咬み合わせとは、つきつめれば上下の歯の当たり具合のことですが、咬み合わせがズレてしまうと様々な問題が発生します。例えば歯の揺れ、歯肉の炎症、歯を支える骨の溶解、歯の破折、虫歯、歯がしみる、顎の関節痛や異常音、偏頭痛、肩や首のコリ、など数えるとキリがありません。これらは従来から知られていた症状ですが、ごく最近、咬み合わせの研究で新しい発見がありました。それは、上下の歯列が咬むことで、重量が約5キロもある頭部を支えるだけでなく、特に下顎はヒトが直立する際の、頭部バランスをとるための、緩衝振り子の働きをしていることが解明されたのです。ですから歯の当たりが悪いと、緩衝振り子が正常に働かず、立つバランスが崩れるばかりか、頭部を支える頸椎がズレてしまい、ひいては全身症状に発展する可能性があることが、研究者の間で指摘されております。そのような咬み合わせ異常の原因を探り、改善するために歯の当たり具合を調整したり、必要な場合には上下の歯の咬み合わせの全てを、新たに再構成するのが咬み合わせ治療です。
また年齢を重ねるにつれて歯の表面は擦れて、靴の踵のように磨り減ります。すると加齢とともに咬み合わせの高さが低くなり、頬骨からオトガイまで下顔面の距離が短くなって、お顔にシワが出来て、口元が潰れたような年老いた顔立ちになります。抗加齢歯科医学の立場から、このような低下した咬み合わせを元の高さに戻しつつ、全体の歯の当たりを理想に近く復元するというアンチエイジング治療も行っております。下記の写真は、そのような治療の過程を一部ご紹介したものです。
症例
患者さんの咬み合わせと顎の動きを忠実に再現する器械に、精密な歯型をセットして、実際と同じ動きをシュミレーションしながら上下の歯の接触関係を診査します。そして問題を解決して理想的な咬み合わせになるように、歯の接触関係を改善するようワックスにて咬み合わせを修正します。次にこの状態を実際に口腔内の歯で再現するために、ハイブリッドレジンセラミックを歯の上に添加して模型でシュミレーションしたのと同じように微調整します。
上下前歯の重なり加減と、顎を動かした際の接触状態は、お口全体の咬み合わせにとって非常に重要です。ですからプロビジョナルレストレーション(精密な仮歯)を作り数週間から数ヶ月の間、違和感や不都合な症状はないか、発音や咀嚼は快適かなど予め試行テストしたあと、問題が無く、諸組織の働きが適合していることを確認してから歯型をとり、最終のセラミック製クラウンを製作して強固に接着します。下の写真は、このようにして上下の前歯が最終的な修復がなされ、奥歯はまだ元の歯の上にハイブリッドレジンセラミックを添加した状態です。
前歯の咬み合わせが定まったら奥歯の治療に入ります。写真は左の上下奥歯の歯型をとり製作しているところです。下の歯が無い部分にはBicon社製のインプラント治療をいたしました。
左の上下奥歯が完成し口腔内に接着したところです。写真の歯のブルーの点は咬み合わせの接触関係を確認するための仮の印です。
左の上下奥歯が完成し口腔内に接着したところです。写真の歯のブルーの点は咬み合わせの接触関係を確認するための仮の印です。
完成したオールセラミック治療による新しい咬み合わせです。初めの診断どおり理想的な歯の接触関係が再現されました。快適に咬めるようになったと非常にお喜びでした。さらに咬み合わせの高さを挙上したことにより、以前より口元が若々しい印象になりました。